川越に障がいのある人がものづくりの技術を学びながら働き工賃を得ることができる就労継続支援B型事業所「able! FACTORY」が開設されました。カフェやドッグパークもあり、障がいの有無に関わらず地域の人々との繋がりを大切にしています。
「able! Project」とは?
able! project障がいのある人の就労と自立を支援するプロジェクト。このプロジェクトの目的は、何かを「できる(able)」ということの喜びを広げること。できないことがあっても、ひとつでも多くの「できる」をつくり、「働く喜び」を感じられる世の中を目指しています。
その一環で開設された「able! FACTORY」。就労継続支援B型事業所とは、障がいのある人に就労機会を提供すると共に、生産活動を通じて、その知識と能力の向上に必要な訓練などの福祉サービスを供与する施設です。運営はTENGA。プロジェクト発足の経緯について「創業以来大切にしている 『性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく』というビジョンの下、TENGAはこれまでさまざまな性の悩みに共に向き合ってきました。障がい者支援を行う事業者の方や団体とともに活動する中で、障がいのある方たちは、働く喜びと満足な収入を得ることがとても難しいという環境について知るようになり、障がいの有無にかかわらず、誰もが『働く喜び』を感じられる世の中にしていきたい。自分たちにできる方法で、より良い変化を起こしたいと考えました」と松本光一社長。
「自分が頑張って覚えた技術でものを作ることの嬉しさ、できたときの喜びは他では得られないものです。その喜びを感じてほしい。そしてそこから収入を得ることで、『できる!』の喜びを感じてほしい」と話します。
20年近く福祉施設運営に携わってきた施設長の木村利信さんは、B型事業所での仕事は「一般的に1つの施設で1種類の作業を担い、内職的な軽作業が多いため全国の平均工賃は1万6,000円ほど。able! FACTORYでは複数の作業を用意し、障がいのある方が自分の意思で仕事を選ぶことで仕事の継続性が高まり、技術の向上につながります。それによって平均よりも高い工賃とやりがいを得ることができます」とプロジェクトの意義を話しました。
また、松本社長は「able! FACTORYの利用を検討される方には、安心して働けるようにしっかりサポートしていきます。互いに協力することで、これまでできなかったことを『できる』に変えていく。こうした助け合いが当たり前のようになって、皆さんと楽しくできたら」と、このプロジェクトに懸ける思いを話しました。
「able! FACTORY」のご紹介
ものづくりを通していきいきと働ける場所を目指すable! FACTORYは、清潔感がありとても環境に配慮されています。
作業室
able! FACTORYでは、ひとりひとりの特性や「できること」に合った仕事を見つけていき、ものづくりを通して「 働く喜び」「できる喜び」を感じられるよう、様々な仕事があります。
設備
静養室や休憩室、段差のないオールジェンダートイレなどのほか、衛生面に配慮した直接手を触れずに水が流れる手洗い場などを完備。
カフェ・ドッグパーク
「able! CAFE」と「DOG PARK」は、障がいのある人もそうでない人も、大人も子供も犬も、分け隔てなく楽しくコミュニケーションができる場所です。
一般客も利用できるable! CAFEでは、定期的にワークショップを開く予定だそうです。
カフェのメニューには看板商品の「able!焼き」「ワンちゃん用のable! 焼き」の他、おいしいフードやデザートが揃っています。カフェの売上金は寄付されるということで、障がい者支援に役立てられるので、食事をすることが福祉につながることになります。
able! CAFEの壁には、障がいのあるアーティスト山野将志さんの作品「ベールの朝」の複製原画が飾ってあります。素敵ですね。
主な仕事内容
able! FACTORYでの具体的な作業は主に5つ。特性に応じて様々な仕事があります。
1.「able! TENGA」の制作
able! TENGA製造の最終工程であるシュリンクフィルムの包装作業、検品、梱包を行います。パッケージのアートは山野さんの作品。
2.衣料品の製作
シルクスクリーン印刷を中心に、Tシャツなどさまざまな衣類に印刷を行います。施設内で製版も行っており、able! FACTORYオリジナルデザインによる製品の製造も行います。
高校の美術の先生が週に何回か来て教えてくれることもあるそうです。
3.パソコンの修理・販売
使用済みパソコンに再生処置を施して再活用する再生再活用事業を行っています。再生したパソコンは寄付や販売用として提供します。
4.カフェでの接客・調理
able! CAFEのスタッフと来店客が自然に触れ合うことで、楽しくコミュニケーションできる場所を目指しています。
5.通販サイト「able! STORE」の運営
able! FACTORYで生み出された衣料品やリペアパソコンなどを販売します。日々の商品管理、発送業務などを行います。
※「able! TENGA」は1つ購入されるごとに障がい者支援として100円を寄付し、寄付金はTENGAで集約して障がい者施設や学校などに寄付します。制作したPCなどの物品も同様。
ハローパーティー
オープン前には施設のお披露目として、ハローパーティーが行われました。会場では川合善明川越市長、川越市議会議員の海沼秀幸さん、松本光一TENGA社長のあいさつの後、施設の仕事の「シルクスクリーン印刷」「PCリペア」の一部体験ができるワークショップを開催。併設の「able! CAFE」でカフェメニューの試食も行いました。子どもたちやワンちゃんもたくさん集まって楽しそうでした!
「できる!の喜び、みんなのものに。」のメッセージを、エントランスの壁にみんなでウォールペイント。
松本社長は「たくさんの方が来場してくれて、皆さんが目をキラキラさせて楽しんでいる姿に心から感謝の気持ちがあふれて、心が震えるほど感動しました。スタッフのお母さんが『あの子が私に気が付かないくらい、こんなに頑張って働いている姿を見たことがない』とすごく喜んでくれたと聞いて、誰かが喜んでくれることが私たちの喜び、エネルギーで、それこそが働く喜びだと実感しました。今後も地域の皆さんや遠方からいらっしゃる方々にも楽しんでもらえるよう、ワクワクするイベントや交流の場を設けて、さまざまな『できる!』の喜びを広げていけたら」と嬉しそうに話しました。
「まだスタートラインに立ったばかりですが、大切な第一歩を踏み出せました。この活動をもっと多くの人に知ってもらい、今日の一歩をさらに大きく育てていきたい」とも。
このような施設はほとんど行政が主体となってやっているので、民間主導で施設を作るのは珍しいそうです。地域にとっても良いことですし、色々な可能性が感じられる取り組みですよね。みんなが笑顔になれる、オープンでフレンドリーな場所になってほしいです。
編集部よりコメント
エントランスもガラスで中が見えて、白を基調とした内装で清潔感があります。
静養室にはベッドがあったり、休憩室には冷蔵庫や電子レンジなどもあったり、働きやすそうな環境でした。
印象的だったのは、真剣にお仕事をされながらも施設長の木村さんやスタッフさんの笑顔が素敵だったこと。それだけで明るく楽しくなりますし、カフェやドッグパークのお客様もみなさん良い表情でした。協力したり助け合ったりできることは大切ですよね。
このようなコミュニケーションが広がり、たくさん笑顔が増えていくと嬉しいです。
きっとこれからも進化していくプロジェクトですね。